経文「転禍為福」
絶対と相対の折り合いをつけることが現世の最優先事項であるところが、
相対の折り合いをつけることに執心するのが修羅の世と言われる由縁であろう。
「せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明」
が我々であると詩人は謳う。
明日は笠岡道の駅で「ポピーフェスティバル」が開催される。
例によって宝亀さんとライブ出演させていただく。
声がかかるのは非常に嬉しいことだが、いかんせん島から陸へはフェリーに乗らねばならない。
往復の交通費を払ってただ歌いに行くだけでは私の島暮らしもいささかひもじいものになりかねない。
はた!とひらめき、パンを売らせていただくことにした。
笠岡諸島アンテナショップのゆめぽーとさんに委託販売を依頼したわけである。
さあこれでパンが売れれば交通費+αくらいは出る。
気合入れて食パン12斤(一斤=2山)、ミニクロワッサン33個!
8kg以上の生地をこね回すわけである。
今回は色気出して全粒粉などというものを入れてみた。
というか、買ってあったのにずっと使うのを忘れていたんである。
そして、本日石窯にて焼いたわけだが、
その前に2次発酵であらぬ事態に!!
パンの表面がはじけて膨らむどころかしぼんじゃってるではないか?!
こ、これは一大事じゃ!!
しかし一度こうなったらもうどうにもとまらない。(♪)
ええい、焼いちゃえ!
焼きました。
なんと!でけたのが、レンガ!
いや、これレンガでしょ?レンガちゃうの?
目の前が真っ暗になりやした。
思わず積み重ねてみたりした12斤!
(しかし待てよ!意外に食べたら美味しかったなんてことなら「レンガぱん」と称して売る事だって可能じゃないか!)
(「レンガとしてカモフラージュにも最適!」とかなんとか宣伝文句をのたまったら意外に興味を引くかもな!)
(うん、そうだ!ちょっと味見しみい!)
とナイフで切りますと、外は確かにレンガのように固いが中はもっちり!
(なんかこりゃあらたな領域に踏み込んだかもしれんな!)
と喜び勇んで一口ぱくつくと、
食感はなかなかイケる!これはもしかしてもしか・・・おえ~!あ、味がねえ~!!
味がないんである。
そして味がないパンはヒジョーにまずいんである!
そして私の頭ん中はフラッシュバック走馬灯のようにパン生地を仕込んだ場面に巻き戻し再現!
すると、「おい!塩入れてねえよ!」
と突っ込むが時すでに遅し。
そういえば、パン作り師匠の藤W女史が言ってたっけ。「塩を入れ忘れたパンは食べれない。」って。
塩かあ!
古来塩は人間生活にとってなくてはならぬ貴重品であったという。
まったく塩をなめておった!
おそらく発酵状態がおかしかったのも塩を入れてなかったせいだろう。
しかしまだクロワッサンがあるぞ!
焼きあがったミニクロワッサン、なんか見た目が・・・^^;
味見してみると、
なんか全粒粉の固い粒々が妙に耳障りならぬ歯障りに感じて、
せっかくサクサク触感でおいしいのになんかイマイチなんである!
これも巻き戻し再現!
全粒粉の割合が多すぎたな!
これもパン作り師匠F原女史にいただいたレシピには全体の粉の一割が全粒粉、となっている。
僕2割入れた。
なんの疑問もなくなんとなく二八そば的に2割だなって感じで入れてみた。
もうまったく当てが外れました。
こりゃ交通費が浮くどころかさらに材料費分赤字になってしまった!
塩の入ってないレンガぱんなんて食べれたもんじゃないので、
マサムネのえさ・・・といってもさすがに12斤は食えないだろうと、
すずらんに食わせてみるが、
ひとしきり匂いを嗅ぎまくってようやくちびっとかじって
なんか知らんがやたら入念にもしゃもしゃとよく噛んで、
そのうち妙な表情になってくちびるを震わせておるので、
なんかやばい?
と、フジイくんに食わせるとなんのためらいもなくパクついてむしゃむしゃ食べておったが、
すぐに飽きて草に向かう。やっぱり自分がヤギだというアイデンティティーの確認になっただけだ。
いっそレンガぱんをいっぱい作ってレンガぱんの小屋でも作ってひねもすのたりのたりと壁とか床をつまみ食いする、なんてやけくそな気にもなってしまう。
レンガぱん小屋の照明はやっぱり、いかにもたしかにともりつづける因果交流電燈のひとつの青い照明 がよかろう。
ああ、現世とはかくもはかなく相対に揺らぐ。
P.S.
というわけで、明日道の駅で売らせていただくのはなんかイマイチなミニクロワッサンのみですが、
中にはおいしいと感じる方もいるかもしれません!
よかったらご賞味くださいませ。