「フジイくん」といふ生き物

フジイくんは今日も一匹である。

山の上の鬱蒼たるイバラをひたすら食らう。

開墾特攻隊長面目躍如の活躍である。


ヤギは大抵一匹では寂しがり、

人が行けば「メェ~」、立ち去ろうとすればさらに寂しそうに「メェ~」と鳴く。


フジイくんが「メェ~」と鳴くのを最後に聞いたのはいつだろう・・・


一週間ぶりくらいに様子を伺いに山に上がると、平然と仁王立ちのフジイくん。

その凛々しさと貫録に目を奪われる。仙人か獅子のような風貌。

一声も発さない。

さらにその仕事っぷりにほれぼれする。

「でかしたぞ、フジイくん!」

どうだ!と言わんばかりの堂々たるフジイくんに頼もしさを感じる。

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フジイくん入植前(4月8日)

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枝だけになったノバラをノコギリで叩き切っていく。

立ち去る時も一声も発さず、ひたすら食に没頭するフジイくん。

 

あれはヤギではなく、「フジイくん」という立派な生き物と化している。

 


フジイくんの子孫はおおらかに元気に育っている。

2匹仲良くじゃれ合い飛び跳ね走り回る。

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焼き鏝除角の跡も今のところ角が生えてくる気配はない。

もしかして、成功?!

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きっとたくましくおとなしい雄ヤギになるだろう。

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 下から強烈な視線を送りながら舌なめずりするマサムネが気になる。